(一)日本人住民の減少と外国人住民の増加----不可欠な外国人労働者の適正処遇
2019年1月1日時点の「外国人を含む日本の総人口」は1億2744万3563人で、前年比0.21%減の26万3696人減少であった。このうち「日本人住民」は前年比0.35%減の43万3239人減少であり、1億2477万6364人となった。その内訳は次表のとおりである。とくに2018年の「日本人出生者数」は、1979年度の統計開始以来最少の91.1万人であった。これに対して「死亡者数」は逆に、79年度以来最多の136万人超となった。
こうした「少子高齢化」の持続から、「日本人住民」は2006年に初めて減少し、08と09年に増加したものの10年から10年間減少し続け、「減少数」も18年には最大となった。しかも「老年人口」が28%を占め、「年少人口」の2倍以上となっている。
(表1)2019年1月1日現在の日本の人口(カッコ内は対日本人総人口比) *総務省「住民基本台帳に基づく調査」より算出・作成 |
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日本人住民1億2477万6354人(前年比43万3239人減) <18年の年間出生者数:91万1000人、死亡者数:136万3564人> |
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年少人口(0~14歳) 1553万1403人(12.45%) |
生産年齢人口(15~64歳) 7423万887人(59.49%) |
老年人口(65歳~) 3501万4064人(28.06%) |
外国人住民266万7199人(前年比16万9543人増、6.79%増、対総人口比2.05%) |
他方で「外国人住民」は毎年10万人以上増加して、現在は約266.7万人、全住民に対する外国人住民の割合は2.05%となった。しかし欧米諸国の同様な割合の10~15%と比べると、なお極めて低い。ちなみに国別・地域別では中国からが最も多く3割近くを占め、これにベトナム、フィリピン、ブラジルなどと続く。
この日本の「外国人住民人口」は、年齢別では「生産年齢人口」が85.07%を占めるから、明らかに大部分が仕事を求めて流入している。そこで政府は、労働者としての外国人の住民としての入国を重視し、外国人の新たな在留資格「特定技能」を創設した。
これにより、現在の在留資格の一つである「技能実習生」から「特定技能資格」への変更を含めて、今後5年間で最大34.5万人の外国人住民増加を見込む。しかし彼らの「労働条件」および「子供教育条件」や「語学研修」を含む「総合的な処遇」の改善と、これらに関する行政の厳格な監視が不可欠である。なぜなら、これまで「外国人技能実習生」が、給与や残業代の未払いあるいは長時間労働などの処遇の劣悪さにより、5年間で2万6000人、2017年だけで7000人が失踪している。
後述のとおり「建設業関連」の人手不足は深刻であり、外国人労働力を当てにするほかはない。また地方とりわけ「限界過疎地」で「介護サービス」の人材が足りず、さらに「農業従事者」も減少する一方である。これらの他にも地方における労働力不足が深刻となっており、ここでは外国人労働力が不可欠となっている。
しかし地方における「外国人労働者の定住」は難しい。とくに「最低時給賃金」が700円台の県が18県にも及ぶが、これらの賃金は東京都などの最低賃金より2~3割も低い。それゆえ、こうした地域には外国人労働者は居座らない。したがって、これらには行政の補填が不可欠である。
しかし最近の国家予算に占める「地方交付税交付金」は減少の一途をたどり、そのような「地方行政に拠る補填」も困難となっている。他方で国の「アメリカの武器を買う防衛予算」は増加の一途で、この10年間で11倍となった。現政権の「トランプ忖度」のゆえである。この増加を止めて、それを地方交付税交付金に充てるべきだ。
(二)女性就業者----初の3000万人突破だが課題も
労働人口の減少に関して、外国人労働者の増加を目指すことも重要であるが、もう一つ日本人の女性労働人口の増大も不可欠であり、その傾向が見えてきた。総務省の2019年6月の労働力調査によると、女性の就業者数(原数値)は3003万人と、比較可能な1953年以降で初めて3000万人を突破した。
これは前年同月より53万人増え、就業者全体の同伸びの9割ちかくを女性が占めた。これには専業主婦たちが、新たに仕事に就くことがかなり貢献している。女性の就業者が全体の44.5%を占め、日本も、多くの「欧米の主要先進国」の同40%台後半の水準に近づきつつある。
ところで女性の就業者を年代別にみると、65歳以上の伸びが目立ち、2019年6月は359万人となり、10年前の09年平均と比べて145万人も増えた。それでも「65歳以上の女性の就業率」は17.7%で、男性の同年代の34.3%よりかなり低い。それゆえ引き続き増加が見込まれる。日本の人口全体の減少が続くなか、「女性」や「高齢者」が、働き手の不足を補う点で、存在感を増している。
今や「女性の生産年齢人口(15~64歳)の就業率」は71.3%で過去最高になった。年代別では15~24歳は50.5%で、同年代の男性を上回る。さらに25~34歳は78.1%、35~44歳は77.8%と10年前より10ポイント以上高くなっている。
これまで女性の場合、30歳前後から結婚や出産を機に仕事を辞め、就業率が下がる「M字カーブ」が課題とされてきたが、これは解消に向かっている。保育施設の増設などが寄与してきた。ただし働き方の多くはパートなど非正規で、女性の雇用者全体の55%を占める。男性の非正規は23%で2倍以上の差がある。女性の雇用は、人手不足を補う性格が根強いからだ。
したがって「女性管理職の割合」は欧米と比べて低く、管理職に占める女性の比率は16年時点で12.9%である。これに対してアメリカは43.8%、フランスは32.9%となっている(独立行政法人の労働政策研究・研修機構)。女性は「出産・育児で休職」や「短時間労働」が避けられないケースが多いが、日本では昇進する際に、そうした事情が依然として不利に作用している。これを克服する「企業の意識と制度」の改革が不可欠である。
(三)失業率低下だが非正規雇用が37%超、偏る人手不足業種
このような労働人口の状況から、「失業率」は次第に小さくなっており(表2)、2019年6月の男女合わせた完全失業者数は前年同月比6万人減の162万人となった。これには新たに転職活動する人などが減ったことも影響した。他方15~64歳の「就業率」は77.9%、20~69歳の就業率は78.8%である。このうち男性の就業率は84.4%、女性は71.3%で、いずれも前年同期より上昇している。
2019年6月時点のこれらの雇用形態は、「正規の職員・従業員数」は3531万人、前年同月比0.9%増の30万人の増加で、55か月連続で増加している。これに対して「非正規の職員・従業員数」は2148万人、これも前年同月比2.2%増の46万人の増加で、21か月連続の増加である。その結果、役員を除く全雇用者に占める「非正規の職員・従業員の割合」は37.8%となり、前年同月に比べ0.3ポイント上昇した。
(表2)完全失業率の推移 *総務省「労働力調査」より転載 |
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年平均 |
月次(季節調整値) |
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16年 |
17年 |
18年 |
19年3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
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完全失業率 |
3.1% |
2.8% |
2.4% |
2.5% |
2.4% |
2.4% |
2.3% |
他方「平均有効求人倍率(有効求人数÷有効求職者数)」も減少傾向で、19年6月は1.61倍、そのうち「正社員の有効求人倍率」は1.15倍であった。しかし業種によっては「人手不足」が著しく、人手不足のため廃業する業種もある。表3は人手不足(有効求人倍率)が3倍以上の職種を倍率が高い順に並べているが、そうした「極端な人手不足業種」が17~18業種に達している。
とりわけ「建設躯体工事」の有効求人倍率は11倍超、「医師・歯科医・薬剤師」も約6倍、「運輸」「介護サービス」「社会福祉」など高齢化社会に不可欠な業種も同3倍以上の人手不足であり、また「販売業」の人手不足も「有効求人倍率3.5倍」と高い。ちなみに「一般事務」の有効求人倍率は0.4弱であり、これは「人余り業種」ということであるが、このように有効求人倍率が1を切る職種はほとんどない。
(表3)有効求人倍率(求人数/求職者数)の順位と有効求人倍率(2018年1~12月期) |
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1)建設 躯体工事11.18 |
2)保安業
7.59 |
3)建築土木測量 6.18 |
4)医・歯 獣・薬剤師 5.89 |
5)建設
4.98 |
6)土木
4.83 |
7)生活衛生サービス 4.4 |
8)外勤事務 4.15 |
9)採掘
3.78 |
10)機械整備修理 3.67 |
11)販売
3.49 |
12)運輸郵便 3.4 |
13) 電気工事 3.37 |
14)介護サービス 3.33 |
15)専門社会福祉 3.05 |
16)医療 技術 3.01 |
17)自動車運転 3 |
18)金属加工 2.99 |
しかし他方でAIの導入や景気の悪化により、大手行をはじめとする銀行や大企業のリストラが進んでいる。3メガバンクでは3.2万人を減らす予定。富士ゼロックスが国内外の約1万人、日産が1.25万人の削減を発表している。デパートなど大手小売業でも、三越伊勢丹ホールディングスは早期退職者制度により3年間で800~1200人を、セブン&アイ・ホールディングスも、コンビニ、スーパー、百貨店の計1000店を閉鎖・移転で、22年までに3000人の削減を予定している。
けれどもこのリストラから放出される労働力は、上記の「人手不足業種」への転職が、技能の観点から難しいケースが多く、労働移動がスムーズに行われていない。したがって多様な「技能訓練・取得」の公的な施設・制度が不可欠となっている。